あるIT企業でプロジェクトマネージャーを務めるYさんは、新たなプロジェクトのリーダーとして、入社四年目のエンジニアのSさんを抜擢しました。
YさんはSさんに対し、全体目標とそこに至るための段階的な手順を示し、定例会議で進捗を確認する以外は細かい指示をせず、多くの権限を委ねたのです。
これまでリーダーの経験がなかったSさんは苦悩しながらチームをまとめ、問題解決の具体的方法を模索し続ける険しい道のりを歩みました。
最終的にプロジェクトは成功し、紆余曲折を経て貴重な経験を積んだSさんは、顔つきが変わり、能力向上と共にメンバーからの信頼を得たのです。
Yさんは「リーダーを任せた側は、『失敗の責任は自分がとる』という相当な覚悟がいる。そこから部下の成長と双方の信頼関係が生まれる」といいます。
部下が成長していくには、〈今は未熟でも必ず伸びる〉と信じて任せる上長の愛情と覚悟による支えが必要です。さらに、その人の特性をよく見極め、成長を促すための場を作ることが重要だといえそうです。
今日の心がけ◆信頼関係を築きましょう
出典:職場の教養10月号
感想
この話の中で最も印象的だったのは、Yさんのリーダーシップです。
特に、Sさんに多くの権限を委ねた点に、真のリーダーシップの本質が見えます。細かい指示をせず、全体目標とプロセスを示したうえで、進捗確認以外はSさんに任せる姿勢は、相手を信頼し、成長を促そうとする愛情と覚悟の表れです。
このような信頼を前提にしたリーダーシップは、部下の主体性を引き出し、自己成長を加速させる効果があると思いました。Sさんが苦悩しながらも成功に導いたことは、その信頼の賜物であり、彼が得た自信と新たなスキルは今後のキャリアにおいて大きな武器となるでしょう。
また、「失敗の責任は自分がとる」というYさんの覚悟が部下の成長に欠かせない要素であると述べている点は、とても共感できます。
リーダーがこうした責任感を持つことで、部下も安心して挑戦することができますし、真の意味での信頼関係が築かれていきます。これは、単なる仕事の成功だけでなく、チーム全体の士気や成長にも大きなプラス効果をもたらすでしょう。
否定的な感想
この話は理想的なリーダーシップの例を描いていますが、実際の職場ではこのようにうまくいかない場合も多々あると思います。
YさんがSさんを信じて権限を委ねたのは素晴らしいことですが、全ての部下が同じように成長するとは限りません。
中には、「すべて自分に仕事を押し付けられた」と感じてしまう方もいるのではないでしょうか。
リーダーシップとは単に任せるだけでなく、適切なタイミングでの助言やサポートが必要です。Sさんが自力で解決にたどり着けたのは結果論に過ぎず、途中で挫折する可能性も大いにあったはずです。