年々体力が衰えていることを痛感していたA氏は、健康を取り戻すために朝のジョギングを始めることにしました。
その時間帯は家族がまだ寝ており、何かできることはないかと思い立ったA氏は、玄関の家族の靴を揃えるようにしました。すると、それから一カ月が経過した頃、A氏が玄関に行くと、靴が整理整頓されていることが多くなっていました。
年頃の息子がいるA氏は、以前は「自分の靴を揃えなさい」とよく息子に行ってきたものの、言うことを聞かず、時にぶつかることもありました。しかし、そんな息子の靴もしっかり揃えてあるのです。
ある日、妻に「皆の靴を揃えてくれているの?」と訊くと「私は何もしていないよ。多分自分で靴を揃えていると思うよ」と言うのです。
それを聞いたA氏は、頭ごなしに注意するよりも、自分が率先して取り組めば、相手にも波及していくことを実感しました。そして、仕事でもそうした姿勢を忘れずにいたいと思いました。
今日の心がけ◆自ら進んで取り組みましょう
出典:職場の教養11月号
感想
A氏が体力作りの一環で始めた朝のジョギングが、思わぬ形で家族の間にも良い影響を与えているというエピソードには、心が温まりました。
とりわけ、言葉や強制で伝えようとしても届かなかったことが、行動を通して自然に伝わっていくという気づきが素晴らしいと思います。
A氏の息子さんが父親の姿を見て靴を揃えるようになったのは、家族の心のつながりが日々の小さな行動を通じて形成されている証だと感じました。
また、このように自分の行動を通して人に影響を与える「率先垂範」の姿勢は、家庭だけでなく仕事や友人関係など、さまざまな場面で効果を発揮すると思います。
人間関係や仕事の場でも、説教や命令よりも、周囲が自然と影響を受けて行動するような環境を作ることが理想的です。
A氏のように、さりげなく行動することで相手に気づきを与えることは、一見小さなことに見えても、職場や家庭の雰囲気に大きく貢献する力があります。
誰かに影響を与えたいときこそ、自分が「進んで取り組む」という姿勢が周囲に良い影響を与え、穏やかで信頼感のある関係を築けるのだと改めて感じました。
否定的な感想
A氏の家族への気遣いや、率先して行動する姿勢が素晴らしいことは間違いありませんが、すべてのことに「率先垂範」の姿勢を求めることが良いかどうかは少し疑問に思う部分もあります。
例えば、家族の中でも役割や責任を共有し、自分だけが「やって見せる」立場になることで、負担が偏ってしまうこともあるかもしれません。
また、「言わずに行動する」ことが常に効果的であるとは限りません。
A氏のエピソードではうまくいきましたが、状況によっては、きちんと言葉にして説明したり、理由を示したりすることも必要です。
特に年頃の子どもにとっては、行動だけでは十分に伝わらない部分もあるため、適度に話し合いを交えながら、バランスよく「伝える」ことが必要だと感じました。
さらに仕事の場では、率先して行動する姿勢だけでは伝わりきらないこともあるため、誤解を避けるためにも周囲に適切に意思を共有する力も重要です。
A氏が「仕事でも実践したい」と思う気持ちは良いですが、あまりに「行動で示すこと」に固執すると、逆にコミュニケーションが一方的になってしまう恐れもあるのではないでしょうか。