「挨拶は人と人とをつなぐ金の鎖」と言われるように、挨拶はよい人間関係を築くうえで欠かせないコミュニケーションの第一歩です。
Aさんが旅先でバスを利用した時のことです。バスが終点の駅に到着すると、先頭の女性客が運転手に「ありがとうございました」と明るく笑顔でお辞儀をして降車していきました。
すると、それに続くように、子供から大人まで、乗客が次々に運転手にお礼を言って降車するのです。さらに、運転手も律義に一人ひとりに笑顔を向けて「お気をつけて」と見送ったのでした。
いつもは何も言わないAさんも、この日は自然とお礼を言って降車しました。〈挨拶ひとつでこんなに明るく心地よい雰囲気になるとは。職場でも、朝の挨拶やお礼の言葉がけをしっかり行なおう〉と決心したAさんでした。
挨拶は周囲を変える力を持っています。まずは自分から明るい声、明るい表情で挨拶し、周囲の環境も明るくしていきたいものです。
今日の心がけ◆明るい声と表情で挨拶をしましょう
出典:職場の教養11月号
感想
バスという日常的な場面で、たった一人の女性客が「ありがとうございました」と運転手に声をかけたことで、その場の雰囲気が変わる様子は感動的です。
挨拶が持つポジティブな力が、一人の行動から次々と波及していく様子はまさに「金の鎖」のようなお話でした。
Aさんのように、普段は挨拶に無頓着だった人が、その効果を目の当たりにして行動を改めるという変化も非常に感慨深いです。
また、バス運転手が律義に一人ひとりに「お気をつけて」と返している場面は、サービス業に従事する人の心構えが描かれていて、心温まるシーンです。
この話が日常生活の些細な行動に光を当て、それが人間関係や社会全体に良い影響をもたらすという点を丁寧に伝えている点は素晴らしいと思います。
挨拶が人と人とをつなぐ第一歩であるという考えを改めて深く感じました。
否定的な感想
このエピソードはやや理想的に描かれすぎている印象も受けます。
たしかに挨拶にはポジティブな力がありますが、必ずしも全員がそれを自然に受け入れるわけではないでしょう。
例えば、挨拶に対して反応が薄い場合や無視される場合、積極的に挨拶をする側が傷ついてしまうこともあります。そういった現実的な側面も考慮に入れると、挨拶が「必ず周囲を明るくする」と断言するのは少し偏りがあるように感じます。
また、Aさんが職場でも「朝の挨拶やお礼の言葉がけをしっかり行おう」と決心する部分は素晴らしいですが、実際にそれを継続することの難しさや、挨拶の習慣化における具体的な工夫も触れられると、より深みのある内容になったのではないでしょうか。
挨拶を始めるきっかけを得ることは容易ですが、それを日常的に実践し続けることがより重要であり、そこに注目してもよかったかもしれません。