恩送り
Aさんは間もなく社会人となって一年が経過します。 学生気分もすっかりなくなり、会社の戦力として与えられた業務に日々向き合っています。
入社当初、Aさんの指導担当は二年目のBさんでした。 Aさんの会社では、これまでも入社年の近い先輩が、新入社員の指導担当を務めてきました。 Aさんは、積極的にアドバイスを求めたり、相談をしたりすることが苦手で、仕事が行き詰まってしまうこともありました。
そのような状況の中で、いつもサポートしてくれたのがBさんでした。 Aさんに必要なスキルを教えてくれたり、何度も仕事の相談に乗ってくれたりしました。
Aさんはある日、Bさんに当時の感謝の思いを伝えると、「自分も一年前、同じ経験をしたんだ。 だから今度は自分が後輩にサポートするのが自分の役割で、会社にも一番貢献できると思うんだ」と言葉が返ってきました。
Aさんは、Bさんの丁寧な指導に感謝すると共に、自分が指導担当になった時には、同じように丁寧な指導を心がけようと思いました。
今日の心がけ◆後輩をサポートしましょう
出典:職場の教養3月号
感想
この話の素晴らしさは、「恩送り」の精神が自然に受け継がれていることです。
BさんがAさんに親身になって指導し、その経験を経てAさん自身もまた後輩を支えようと決意する。この循環こそ、組織をより良くし、個人を成長させる要素だと感じました。
単なる仕事の引き継ぎではなく、助けられた経験が「恩」として心に刻まれ、それを次の世代に「送る」という発想があるからこそ、職場の人間関係が温かくなり、個々の成長につながるのだと思います。
特に印象的だったのは、Bさんが「自分も一年前、同じ経験をしたんだ」と語る場面です。
この言葉には、単に仕事の指導をしただけでなく、Bさん自身もまた先輩に支えられ、それをAさんに返しているという連鎖の意識が込められています。
人は、受けた恩をそのまま返すのではなく、次の世代へと渡すことで、本当の意味での恩返しができるのかもしれません。
また、Aさんが「同じように丁寧な指導をしよう」と思えたことも重要です。
単にBさんのサポートを受け入れるだけでなく、それを価値あるものと認識し、自分も実践しようとする意志が生まれた。
人からの支えを当たり前と思わず、自分も誰かを支える立場になろうとする姿勢は、職場だけでなく人生においても大切なことではないでしょうか。
この話から学べることは、後輩を育てることが単なる業務ではなく、人と人との関係の中で自然に生まれる「流れ」であるということです。
支え合う文化がある職場は、単に仕事をこなす場ではなく、人間として成長できる場所になります。
そうした環境づくりに貢献する意識を持つことの大切さを改めて感じました。
否定的な感想
この話は美しい流れではありますが、現実にはAさんのように「相談が苦手」なタイプの人にとって、支援の連鎖がうまく機能しないこともあります。
例えば、AさんがBさんのサポートを受けることなく、ひとりで悩み続けていたらどうなっていたでしょうか。
支援を受ける側の意識が低い場合や、先輩が十分に気を配れない状況では、このような理想的な関係は築かれにくいのが現実です。
また、「恩送り」の考え方は美しいものの、企業によっては指導担当に過度な負担がかかることもあります。
特に年次の近い先輩が指導を担当する場合、まだ自身の仕事を十分にこなせていない中で後輩の面倒を見ることになるため、精神的・業務的な負担が大きくなることも考えられます。
BさんがAさんを支えられたのは、Bさん自身が余裕を持って働ける環境だったからかもしれませんが、すべての職場でこのような理想的な状況が成立するとは限りません。
また、「支えられたから支える」という流れが義務感に変わってしまうと、本来の「恩送り」の精神とは異なってしまいます。「先輩だから後輩を支えなければならない」というプレッシャーが強すぎると、本来の自主的なサポートではなく、単なる業務の一環として形骸化してしまうリスクもあります。
Aさんのように自然と「自分も後輩を支えよう」と思えた場合は良いですが、それをすべての人に求めるのは難しいかもしれません。
また、「今日の心がけ」の「後輩をサポートしましょう」という言葉は、確かに大切なことですが、一方で「先輩をサポートしましょう」という意識も必要ではないかと思いました。
指導する側も、慣れない役割に苦労することがあるはずです。
後輩側からも積極的に先輩を支える姿勢があれば、より良い関係性が築けるのではないでしょうか。