言葉にならない
「いぶし銀」という言葉は、華やかさはないけれども、実力や魅力があることを表現します。 Tさんの職場にも、その言葉通りの力を発揮する先輩がいます。
ある日、Tさんが顧客からの苦情電話に困り果てていた時のことです。 先輩が対応すると、わずか数分で先方は納得し、電話は終了しました。
傍で聞いていたTさんは、説明している内容はほとんど変わらないのになぜ相手が納得してくれたのか、とても不思議に感じていました。
また、同じ作業を行なっても、その先輩の仕上がりの方が美しく、 上司から指示される仕事の理解度も先輩の方が正確で早いのです。
その理由は今もわからないTさんですが、確かに実感したことがありました。 それは、仕事には想像を超える技術や力があるということです。
「コツ」や「勘」といった言葉にできない仕事の感覚は、 多様な経験を積み重ね、じっくりと時間をかけて練り上げられていくものなのでしょう。
自分の仕事の奥深さに意識を向け、より高度なスキルを追求したいものです。
今日の心がけ◆より良い仕事を目指しましょう
出典:職場の教養3月号
感想
この話を読んで、「いぶし銀」のような存在の価値が心に沁みました。
言葉では表現しきれない技術や感覚、いわゆる「コツ」や「勘」といったものが、どれほど大きな影響を与えるかが描かれていて、静かだけど深く胸に響く話です。
特に、Tさんが傍で見ていて「内容はほとんど変わらないのになぜ相手が納得したのか不思議に感じた」というくだりは、経験と人間性の積み重ねがもたらす“空気の違い”を象徴していて、とてもリアルでした。
経験に裏打ちされた振る舞いは、知識だけでは得られない重みがあります。
それを目の当たりにしたTさんが、悔しさではなく、仕事の奥深さに目を向けて「より高度なスキルを追求したい」と感じたことが素晴らしい。
「今日の心がけ」である「より良い仕事を目指しましょう」は、単に頑張ろうという励ましではなく、経験を敬い、丁寧に積み重ねていく姿勢を思い出させてくれます。
これは、若い世代へのさりげないエールとも言えるでしょう。
否定的な感想
この話には「いぶし銀」の先輩のすごさがあまりにも強調されすぎて、Tさんの立場や気持ちが少し置き去りにされているようにも感じました。
先輩の技術や応対の素晴らしさは確かに尊敬に値しますが、それと同時に、Tさんがどんなふうに悩み、どう成長しようとしているのか、もう少し丁寧に描かれていたら、読者ももっと共感できたのではないでしょうか。
また、「仕事には想像を超える技術がある」という表現は魅力的ではありますが、それがどのようにして身につくのかが曖昧で、やや抽象的に留まっている印象も否めません。
「多様な経験を積み重ね、じっくりと練り上げていく」と書かれてはいるものの、具体的なエピソードや時間の積み重ねの描写があれば、より説得力があったと思います。
読後に「結局、どうすればああなれるのか…」という漠然としたモヤモヤが残るのが、少し惜しい点でした。