2025年4月19日(土) 地図の日

地図の日

寛政十二(一八〇〇)年四月十九日、伊能忠敬が日本地図作成のため、蝦夷地(北海道)へ向けて江戸を出発しました。この出来事にちなみ、本日は「地図の日」であり「最初の一歩の日」でもあります。

伊能忠敬は、商家として名を成した後、家督を子供へ譲り、自身は五十歳にして江戸へ移り住みました。本格的に測量技術を学び、五十五歳にして蝦夷地へ向かって出発したのです。

日本中を実際にくまなく歩いて距離を測り、地図を作成したと伝わっています。実際に歩いた距離は四万キロともいわれ、七十四歳で亡くなったときには、まだ地図は完成しておらず、その六年後に後進が地図を完成させました。

壮大な事業を前にしたときに、一歩を踏み出すことは勇気がいるものです。また、自分の関わる期間だけでは完成しないこともあるかもしれません。

しかし、誰かの最初の一歩がなければ物事は始まりません。誰かが動かなければ、応援者も後を継ぐ者も現われません。まず、第一歩を踏み出したいものです。

今日の心がけ◆勇気をもって挑戦しましょう

出典:職場の教養4月号

感想

この話は、「地図の日」という記念日を通して、伊能忠敬という偉大な人物の歩みを紹介しながら、「最初の一歩」の尊さと力強さを私たちに伝えてくれます。

特に、忠敬が五十歳を過ぎてから新しい挑戦を始めたという事実には、大きな勇気と感動を覚えます。

人生の折り返し地点とされる年齢で、あらためて学び直し、自らの足で四万キロを歩くという行動は、どれだけ情熱と覚悟に満ちていたことでしょうか。

「地図」という成果物は、彼の生前には完成しなかったものの、その志が後進に受け継がれ、やがて結実したという点に深い意味を感じます。

自分の行動が未来へとつながる可能性がある——この考えは、目先の結果にとらわれがちな現代において、非常に示唆に富んだメッセージです。

たとえ自分の手で完成を見届けられなくとも、誰かの礎になるかもしれないという希望は、日々の小さな挑戦にも光を与えてくれます。

「今日の心がけ」である「勇気をもって挑戦しましょう」は、ただの激励ではなく、忠敬のような具体的なモデルを伴っていることで、一層リアリティを持って響いてきます。

年齢に縛られず、遅すぎるということは決してない——そんな力強い応援を背中に感じさせてくれる話でした。

否定的な感想

この話の中には少し理想化されすぎている側面もあると感じました。

伊能忠敬の偉業を称えるのはもちろん価値のあることですが、「最初の一歩を踏み出すべきだ」「挑戦すべきだ」というメッセージが、ある種の義務感やプレッシャーとして響いてしまう可能性もあります。

特に、今を生きる私たちにとっては、「動けない理由」や「踏み出せない事情」もさまざまに存在します。

また、忠敬が挑戦に踏み出せたのは、経済的にもある程度の余裕があり、家督を子に譲るという選択ができたからこそでもあります。

そのような条件に触れず、「誰でも一歩を踏み出せるはず」という風に語ってしまうのは、少々現実を見落としている印象も否めません。

さらに、話の終わりで「誰かが動かなければ応援者も後継者も現れない」と語られている点も、逆に「動けない人=責任を果たしていない人」と読み取れてしまう危険性があります。

挑戦しないこと、または現状維持を選ぶことにも、それなりの意味や価値があるという視点が欠けているため、受け手によっては「挑戦しないと人として劣っている」と感じさせてしまうかもしれません。