彩りを加える切手
一八七一年三月一日は新暦の四月二十日にあたります。この日、日本初の郵便事業が始まり、それに伴い切手が発行されました。
日本で最初に発行された切手には、向かい合った竜が描かれていたため、『竜文(りゅうもん)切手」と呼ばれていました。現在では、「普通切手」と「特殊切手」の二種類があります。
日常的によく見かける普通切手は、現在一円から五百円まで二十三種類あります。郵便料金の改正の度に切手のデザインが変更され、直近では昨年十月一日に新たなデザインのものが発行されました。
また、特殊切手は毎年テーマを決めて作られ、風景や文化財、キャラクターなどが描かれています。こうした特別な切手は、心を込めた手紙とともに、受け取った人の心に特別な印象を与えるでしょう。
一五〇年以上続く郵便事業の歴史の中で、様々な切手が発行されてきました。そうした切手の変遷に目を向けてみるのも面白いかもしれません。
今日の心がけ◆物の歴史を調べてみましょう
出典:職場の教養4月号
感想
この話は、日常に溶け込んでいる小さな「切手」という存在に、豊かな物語と歴史が込められていることを丁寧に教えてくれます。
郵便事業の始まりが明治初期に遡ること、最初の切手には竜が描かれていたこと、そしてその後に続く多様なデザインや役割の変化——こうした細やかな視点は、普段あまり意識しないモノの背景に光を当ててくれます。
特に、特殊切手の話には心惹かれるものがありました。
風景や文化財、キャラクターが描かれた一枚の紙片が、手紙という手段とともに人の心に彩りを添える様子は、どこか詩的で温かく、現代のデジタルコミュニケーションでは得られない情緒を感じさせます。
誰かの手を通じて選ばれた切手が、受け取る人の心に「記憶」として残るという考えは、物理的なやりとりの価値を再認識させてくれます。
「今日の心がけ」である「物の歴史を調べてみましょう」も、切手という具体的な例があることで、単なる教訓を越えて身近な実践への一歩として感じられます。
ふとした興味から世界が広がるきっかけになるかもしれない——そんな前向きな気づきがこの話にはありました。
否定的な感想
この話は丁寧にまとめられている一方で、やや懐古的すぎる印象を受ける部分もあります。
特に「心を込めた手紙とともに特別な印象を与える」といった言い回しには、アナログな手紙文化を理想化しすぎているように感じられました。
現代では電子メールやSNSが主流となり、切手を貼る機会すらほとんどないという人も多く、そうした生活の現実に対してどこか距離を感じる語り方でした。
また、切手のデザインに心を配るという美意識は美しいものの、それが「特別な印象を与える」という価値観に過剰な重みを持たせると、逆に気軽な郵便利用を躊躇させるような作用もあるかもしれません。
全ての手紙に「心を込める」ことが求められているように受け取ると、手紙を書くという行為がかえって堅苦しいものになってしまう恐れもあります。
郵便の歴史を振り返るのは興味深い試みですが、それを現代人の生活とどのように接続するかという点において、少し工夫があってもよかったのではないでしょうか。
デジタルとアナログが共存する今だからこそ、切手がどのように再解釈され得るのか——そうした未来への視点も含めることで、より現代的な共感を得られる内容になったように思います。