2025年5月14日(水) きつねとぶどう

きつねとぶどう

イソップ寓話(ぐうわ)のひとつに「きつねとぶどう」の物語があります。

きつねが美味しそうなぶどうを見つけて食べようとしますが、木の高い場所に実っているため届きません。何度か挑戦した後、「あのぶどうは酸っぱくて美味しくないに違いない」と言い残し、他の食べ物を探しに行きます。

この物語からは、うまくいかなかったことに対して、単なる負け惜しみではなく、心を前に向けることの大切さを学ぶことができます。

仕事で失敗したとき、反省することは大切ですが、いつまでも落ち込んでいては仕事がはかどりません。失敗の原因を分析し、改善点を見出したなら、心を切り替えて仕事に臨む必要があります。

まずは、明るい表情や挨拶、胸を張る、腰を真っすぐに伸ばす、深呼吸をするなど、行動を変えるところから始めてみましょう。

明るく前向きな心は、仕事を円滑に進める原動力となります。日頃から明るい動作を意識して、前向きな心と姿勢で業務に臨みたいものです。

今日の心がけ◆明るい心で仕事に取り組みましょう

出典:職場の教養5月号

感想

「きつねとぶどう」の寓話を単なる負け惜しみの例ではなく、前向きな姿勢への転換と捉えている視点には深く共感しました。

挫折を感じたとき、人はつい言い訳を探したり、現実から目を背けたくなるものですが、それを「気持ちの整理」として受け入れ、次に進むための一歩とすることは、成熟した態度だと感じます。

ぶどうを諦めるきつねの姿に、自分の限界や現実を認める潔さを見出し、そこから新しい目標を模索する姿勢は、現代の仕事や生活に通じるテーマです。

また、「明るい表情や挨拶」「胸を張る」など、精神論にとどまらず、具体的な行動として心を整える手段が紹介されている点にも実践的な価値を感じました。

姿勢や呼吸といった基本的な身体動作が、心に与える影響は思いのほか大きいものです。

気持ちが沈んでいるときこそ、まずは形から整えてみる。

その行動がやがて内面を変えていくという、行動心理学的なアプローチも感じられ、説得力があります。

「今日の心がけ」が、ただのスローガンに終わらず、日々を前向きに生きるための指針として心に響きました。

否定的な感想

「きつねとぶどう」の物語を単に前向きな思考の例として処理してしまうことには、少し違和感も覚えます。

きつねの行動は、必ずしも前向きな姿勢とは言い切れず、自分の欲望が満たされなかったことに対する心のバランスを取るための「合理化」に過ぎないとも読めるからです。

これは、現実を正面から受け止めず、自己正当化に逃げてしまうという側面も持ち合わせています。

また、「明るい心で仕事に取り組みましょう」という呼びかけが、時に無理にでも前向きであることを求められているように感じられる危うさもあります。

感情の自然な流れを無視して、形だけ明るく取り繕うことが続くと、心が擦り減ってしまう可能性も否定できません。

ネガティブな感情に向き合い、それを認めたうえで少しずつ歩みを進めることの方が、長期的には健全な回復につながるのではないかと感じました。

前向きであることが強制される空気に陥らないよう、心の自由と柔軟さも忘れてはならないと思います。