「なんで」
普段私たちが使う言葉には、思いや心の癖が表われているものです。
Aさんは中学生の娘と話している時、「お父さんから『なんで?』と訊かれると、責められているように感じる」と言われました。振り返ってみると、口癖のように「なんで」と発していることに気がつきました。
以来、その言葉をなるべく使わないように心がけましたが、なかなか代わりの言葉が思いつきませんでした。
しかし、次第に異なる表現で質問することができるようになっていきました。例えば、「どんな思いでそうしたの?」「何のためにそうする必要があったの?」「どんな理由があったのかな?」などです。
Aさんは「なんで」という言葉を使わないことで、自身が相手に何を質問したかったのかを、より正確に把握することができるようになり、同時に周囲との意思疎通もより円滑になっていきました。
丁寧で的確な言葉を使い、心を込めたコミュニケーションを図りたいものです。
今日の心がけ◆言葉を使い分けましょう
出典:職場の教養5月号
感想
この話には、私たちが日常で何気なく使っている言葉の奥に潜む力と、それを見直すことの意味深さが感じられました。
「なんで?」という一見無害な一言が、相手にとっては否定されたように響く。
特に親子の関係では、その一言が信頼感や心の距離に影響を与える可能性があるという点に、はっとさせられました。
Aさんがその指摘をきっかけに、自分の言葉の使い方を振り返り、改善しようと努力する姿勢はとても誠実で、感動を覚えました。
言葉を変えることで、自分の思いや質問の意図がより明確になり、同時に相手への配慮も深まるというのは、まさにコミュニケーションの本質を突いています。
「なんで?」を「どんな思いで?」といった具体的で優しい表現に置き換えることで、責めるトーンが和らぐというのは親子だけでなく、あらゆる人間関係において大切な心がけだと強く感じました。
「今日の心がけ」である「言葉を使い分けましょう」は、私たちの日常にすぐにでも取り入れられる実践的なヒントだと思います。
否定的な感想
「なんで」という言葉そのものが、常に責める意図を持って使われるわけではないことも忘れてはならないと感じました。
言葉の受け取り方は、言い方や状況、関係性によっても大きく変わります。Aさんの娘さんがそう感じた背景には、単に言葉の選び方だけでなく、親子間における以前からのやりとりの積み重ねもあったのではないかとも思います。
また、代替表現にばかり意識が向きすぎると、逆に言葉が不自然になり、かえって本音を伝えにくくなることもあるのではないでしょうか。
言葉を変えること以上に大切なのは、「どんな心持ちでその言葉を発しているのか」という内面の姿勢なのかもしれません。
言葉の使い分けは確かに大切ですが、それが目的化してしまうと、本来のコミュニケーションの自然さや率直さを損なうリスクもある。
そのバランス感覚を保つことの難しさも、この話から同時に感じさせられました。