柔軟な発想
二人兄弟のAくんとBくんは、いつも学校から帰るとおやつを食べます。
ある日、母親はおやつとして、バナナ一本、リンゴ一個、それにイチゴ八個を用意して、半分ずつ出そうと思っていました。
ところが、兄弟はその日、友達一人を連れてきたため三人で分けることになりました。それぞれの果物を分量も形も同じように平等に、かつ誰もが納得するように三等分することは、果たして可能でしょうか。
これは、一九六六年に発売されて以来、シリーズ累計一二〇〇万部を誇るベストセラーになった多湖輝氏の『頭の体操』で紹介されている問題の一つです。心理学者である多湖氏は、固定観念を嫌い、物事には様々な見方があることを訴え続けました。
なお、この問題の答えは「ミックスジュース」にすることだそうです。たしかに、そうすることで果物を均等に三等分することは可能です。
決めつけたりせず、何事にも柔軟な発想で取り組みたいものです。
今日の心がけ◆柔軟に頭を働かせましょう
出典:職場の教養6月号
感想
この話には、柔軟な発想がいかに問題解決の鍵になるかが、非常にわかりやすく描かれています。
特に、「ミックスジュース」という発想は、物理的に平等に分けることが難しいものでも、視点を変えれば可能になるということを象徴しています。
私たちは日常の中で、物事を「あるがまま」に扱おうとしてしまいがちですが、それが時に思考を硬直させてしまいます。
この兄弟と友人のエピソードは、ただの分け合いの話ではなく、いかに創造力を働かせるか、そしてそれがいかに人を納得させ、満足させるかを教えてくれます。
また、「今日の心がけ」にあるように、柔軟に頭を働かせることの重要性は、現代社会でも非常に大切です。
問題の本質に迫るためには、常識やルールを一度脇に置いて考える力が必要です。
これは、子どもの遊びにも、企業のイノベーションにも、個人の人生の選択にも通じることだと思います。
だからこそ、この話は単なる知恵比べではなく、「自由に考える」ことの価値を教えてくれるのです。
否定的な感想
この話には一つの落とし穴も感じられます。
「ミックスジュース」という答えは、確かに平等に分ける方法として機能しますが、果物の「形」や「味わいの違い」を楽しみたい人にとっては、やや強引な解決とも言えます。
特に子どもにとって、バナナそのままの食感、リンゴのシャキシャキ感、イチゴの甘酸っぱさは、それぞれが固有の楽しみであり、それらを混ぜてしまうことは、体験の均質化とも取れます。
また、「柔軟な発想」があまりにも絶対的な解として提示されることで、「工夫することが常に正しい」というプレッシャーに繋がる可能性もあります。
時には、シンプルに「今日は数が足りないから、どれかを我慢しよう」という選択もまた、人間関係の一部であり、成長のきっかけにもなります。
柔軟さの大切さを説くあまり、「納得する」ことばかりを追い求めてしまうのも、考えものだと思いました。