2025年8月9日(土) 環境が悪いからこそ

環境が悪いからこそ

世界自然遺産の島である鹿児島県の屋久島では、標高五百メートルを超える山地に自生している、樹齢がおよそ千年を超えるスギを屋久杉と呼んでいます。

スギの寿命は一般的に五百年余りといわれていますが、屋久杉は生育環境が好ではないにもかかわらず、二千年を超える巨木が見られます。

屋久島は、新鮮な水に恵まれながらも、花崗岩(かこうがん)が基盤となった栄養が乏しい山地が広がっています。台風も多く、土壌の環境も悪い中、千年以上生き長らえているスギが多いのには理由があります。

それは、栄養分が乏しいため屋久杉は成長が遅く、材質が緻密になり木目が硬く詰まっているからです。さらに樹脂分が多いため、その樹脂が防腐剤の役割を果たして腐りにくいので長生きすると考えられています。

問題が生じた時や成果が出ない時、環境や外部の要因のせいにしてしまうことがあります。そんな時は屋久杉を見習い、〈そのような状況だからこそ〉と心を切り替え、目の前のことに前向きに取り組んでいきましょう。

今日の心がけ◆気持ちを切り替えましょう

出典:職場の教養8月号

感想

屋久杉のたくましさに学ぶ姿勢は、非常に心に響きました。

過酷な環境下であっても、ゆっくりと、しかし確実に成長していく姿は、まさに人間の生き方にも通じるものがあります。

栄養の乏しさが逆に木の密度を高め、腐りにくさに繋がっているという点は、苦境がそのまま欠点になるわけではなく、むしろ強みへと変わる可能性を教えてくれているように思います。

この話を通して、「成果が出ないのは環境のせい」と考えがちな自分の甘さを省みました。

「だからこそできることがある」という視点の転換は、ただの前向きではなく、深い洞察としなやかな強さを感じさせます。

今日の心がけ「気持ちを切り替えましょう」は、問題を乗り越えるというより、問題を活かすという発想に導いてくれる言葉で、非常に実践的で力強いと感じました。

否定的な感想

屋久杉の話を人間の努力や心構えに結びつけることには、やや無理を感じる部分もあります。

自然が長い年月をかけて築いた生態と、今この瞬間に苦しむ人間の心理や状況は、単純には比較できないものです。

環境が悪いからこそ成長した、というロジックは美しく聞こえますが、それは結果論であり、すべての人が悪環境を力に変えられるわけではありません。

また、「気持ちを切り替えましょう」といった言葉は、精神論的に聞こえてしまうこともあり、現実的な解決策に乏しい印象もあります。

気持ちの切り替えが簡単でないからこそ悩んでいる人にとっては、このようなアドバイスがかえってプレッシャーになる可能性もあるでしょう。

屋久杉のように、環境に適応して長く生きるには時間と資源が必要であり、それを忘れてはいけないと感じました。