唯一無二
大相撲夏場所で二場所連続優勝を果たした大の里関は、石川県出身として五十二年ぶりに横綱に昇進しました。稀勢の里関以来八年ぶりの日本出身の横綱誕生であり、初土俵から所要十三場所での昇進は史上最速のスピードです。
横綱昇進の伝達式において、大の里関は「地位を汚さぬよう稽古に精進し、唯一無二の横綱を目指します」と述べました。「唯一無二」という言葉は、大関昇進時にも使われたものであり、相撲道に精進する決意を力強く表明しました。
「唯一無二」とは、「この世でただ一つしかない」ことや「それ以外並ぶものがない」ことを意味します。大相撲の最高位である横綱は、他の地位の力士が負け越すと降格するのに対し、唯一無二の地位です。
だからこそ、横綱には絶対的な「強さ」に加えて、常に力士の模範となるような「品格」も求められるのです。
私たちも強さと品格を持って職場での役割を果たし、唯一無二の価値を提供できるよう、仕事に励みたいものです。
今日の心がけ◆地道な努力を続けましょう
出典:職場の教養8月号
感想
この話は、大の里関の横綱昇進という輝かしいニュースを通じて、「唯一無二」の意味と価値を改めて考えさせてくれるものでした。
特に印象に残ったのは、大の里関が「唯一無二の横綱を目指す」と明言した点です。
その言葉には、単なる強さだけでなく、土俵上でも土俵外でも品格を体現するという強い覚悟がにじんでいます。
史上最速の昇進という事実が彼の実力を証明する一方で、その重みを自覚した発言が、人としての器の大きさを感じさせました。
また、「唯一無二」という言葉を、大相撲の世界に留まらず、私たちの職場や人生においても適用するよう勧めている点が共感を呼びます。
誰しもが自分だけの持ち味を磨き、地道な努力の積み重ねによって、周囲に代えの利かない存在になる――そんな生き方を目指したいと自然に思わせてくれる力強い文章でした。
今日の心がけで促されている「地道な努力」は、まさに唯一無二の価値を生む土壌だと感じます。
否定的な感想
「唯一無二」という言葉の力強さと、それを目指すことの重要性を語る一方で、その理想が時にプレッシャーとなる可能性については触れられていません。
「唯一無二であれ」というメッセージは、ともすれば「他と違わなければならない」「普通では価値がない」といった焦燥感や劣等感を生むこともあります。
現代社会においては、比較や評価が過剰になりやすく、唯一無二を目指すことが過度な自己否定や過剰な競争心につながる危険もあるのです。
また、「横綱には品格が求められる」とされる大相撲の伝統的価値観が、そのまま現代の職場や社会に当てはまるかについても慎重な考察が必要です。
品格の定義は曖昧で、時に多様性を排除する基準にもなり得るからです。
真の「唯一無二」とは、他者と違うことを目指すのではなく、自分の本質を深く掘り下げ、誠実に向き合うことの中にあるのではないでしょうか。
その視点を補完する一節があれば、より多くの人の心に響く内容になったと思います。