創業者の願い
滋賀県出身のK氏は、父が起業した会社に創業時から携わってきました。しかし当初は、地域の会合を優先し、会社を不在にする父を責めていました。
〈社長の分まで自分が会社を支えなければ〉という責任感で働き続け、その後にK氏が後継しますが、次第に経営者としての責任の重さを痛感していきます。すると先輩経営者から「創業者の願いを知っていますか」と、問われたのです。
振り返ると、父が昔から口にしていたのが、近江商人の精神である三方よし「売り手よし、買い手よし、世間よし」というものでした。
〈父は会社に愛情がなかったのではなく、会社を思うからこそ「世間よし」の精神で地域の発展に尽力してきたんだ〉と気づいたK氏。それから会社を発展させたK氏は、創業者と同様の願いで地域の発展にも尽力しています。
企業の後継者に限らず、親の真意を、同じ世代・立場になって理解できることがあります。その理解は自分の成長にも繋がることを先の体験が教えてくれます。
改めて、育ててくれた人の願いに思いを馳せてみたいものです。
今日の心がけ◆育ててくれた人の願いを知りましょう
出典:職場の教養9月号
感想
この話には、単なる親子間の葛藤では終わらない、時間をかけてしかたどり着けない深い「理解」と「継承」の物語が込められていて、胸が熱くなりました。
とくに、K氏が若い頃に感じた父への苛立ちが、同じ経営者という立場に立って初めて「願い」だったと気づく流れには、人間の成熟や視野の広がりが見事に表れていました。
三方よしの精神に込められた想いが、ただの理念でなく、行動と信念の積み重ねとしてK氏の中に生き始めるところに、大きな感動があります。
この話がすばらしいのは、親の言葉や行動が、すぐには理解されなくても、時間と経験を経て初めて“本当の意味”を帯びてくるという真実を伝えている点です。
親の背中を見て育つとはよく言いますが、それは単なる模倣ではなく、内面からその志を理解し、自分のものとして昇華させるプロセスが必要だということを教えてくれます。
そしてそれは、親子に限らず、誰かから何かを受け継ぐすべての人にとっての普遍的なテーマだと感じました。
「今日の心がけ◆育ててくれた人の願いを知りましょう」は、今の自分があるのは誰かの祈りや期待の積み重ねのうえに成り立っているという気づきを促してくれる、とても温かくて深い一文です。
否定的な感想
この話はやや美化されすぎているようにも感じました。
現実には、創業者の行動が必ずしも理念に基づいているとは限りませんし、「三方よし」のような言葉があったとしても、それが常に実行されているわけではありません。
K氏が「父は会社を思って地域に尽くしていた」と気づく流れは感動的ですが、それが一方的な「理解の押しつけ」になってしまう危うさもあります。
もしかしたら、父親の地域活動は本当に私的な付き合いが中心だった可能性もあり、その多面性にもう少し踏み込んでほしかったところです。
また、すべてが「親の願い」に収斂していく描き方も少し気になりました。
自分自身の価値観や判断ではなく、親の言葉に回帰することでしか成長が描かれていない点は、読者にとって息苦しく感じるかもしれません。
親を尊重することは大切ですが、それが必ずしも「正しい答え」ではない場合もあるという視点があっても良かったのではないでしょうか。
さらに、この話が企業の後継者を前提にしている点も、一般読者にはやや距離を感じさせるかもしれません。
家庭や仕事の形は人それぞれで、誰もが親の跡を継ぐわけではありません。
「願いを知る」というテーマをもう少し広義に解釈して、誰にでも当てはまるような展開にしていたら、もっと多くの人の心に届く話になったと思います。
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