正直な感想
経営者のM氏は幹部社員三名を自宅に招いて、食事会を開きました。自らの手料理を振る舞い、日頃の労をねぎらいながら、会話も弾みました。
最後には、M氏自慢の手打ちそばが振る舞われました。最近、M氏はそばづくりに凝っており、歓談の時もそば打ちの話に花が咲き、参加者一同が関心を示していました。
M氏は二種類のそばを出しました。一つは自作の手打ちそば、もう一つはスーパーで購入した市販のそばです。M氏は、市販のそばを自作の手打ちそば、自作の手打ちそばを市販のそばだと紹介をして、食べてもらいました。
幹部社員のAさんとBさんは戸惑いながらも市販のそばを「社長の手打ちそばはおいしい」と言いました。ところが、Cさんは恐縮しながらも「どちらかと言えばこちらです」と手打ちそばを指したのです。
M氏はいたずら心でしたことに詫びを入れ、自分の感じたことを正直に伝えたCさんへの信頼を深めたのでした。
今日の心がけ◆自分で感じたことを大切にしましょう
出典:職場の教養9月号
感想
このエピソードには、いくつもの温かさと誠実さが重なり合っていて、非常に心に残りました。
まず、経営者のM氏が幹部社員を自宅に招き、手料理でもてなすという行動自体に、上下の枠を超えた人間味と感謝の気持ちがにじみ出ています。
ビジネスの現場では、効率や成果が重視されがちですが、このような私的な時間を共有することで、職場の人間関係にも柔らかさが生まれるのではないでしょうか。
そして何よりも興味深かったのは、M氏がそばの味の違いを試すために行った「いたずら」です。
一見、意地悪なように思える行為も、実は人の本音や誠意を見るための試みであり、信頼関係の中で行われたからこそ、後味の悪さを残さなかったのだと思います。
Cさんが遠慮しながらも自分の感じた味を素直に伝えたことは、非常に勇気のある行動であり、「正直さ」という価値がきちんと報われた瞬間に、読んでいて深い安堵と感動を覚えました。
今日の心がけの「自分で感じたことを大切にしましょう」は、まさにこの出来事にぴったりです。
他者の顔色をうかがうのではなく、自分の感覚に耳を傾けることが、信頼や誠実さを育むのだということを、物語が体現してくれています。
否定的な感想
この話に対して完全に肯定できない部分があると感じました。
M氏の行動は、たとえ「いたずら心」とはいえ、部下たちを試すような性質を含んでおり、その意図が裏目に出ていた可能性も否定できません。
信頼関係が築かれていなかったら、あるいはCさんが失敗を恐れて忖度していたら、この「そばの真実」は表に出なかったでしょうし、むしろ心理的プレッシャーを与える行為とも取られかねません。
また、AさんやBさんの反応に対して、M氏がどう感じたのかが明示されていない点も気になります。
たとえ結果的にCさんが評価されたとしても、AさんやBさんが「社長に気を使って」意見を述べたこと自体を責めるのは酷な話です。
職場における上下関係の中で、何をどこまで正直に言うかは、慎重なバランスが必要であり、単に「正直が一番」と一刀両断するのは少し乱暴に感じました。
「感じたことを大切にしましょう」という今日の心がけは確かに大切ですが、それを表現するタイミングや方法についても、配慮や成熟した判断が求められるのではないでしょうか。
ただ感じるだけではなく、どう伝えるかまで含めて「大切にする」姿勢が必要だと、この話から考えさせられました。
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