個性を知る
本日は国民的キャラクター「ドラえもん」の声を二十六年間務めた、声優の大山のぶ代さんの一周忌です。「どこでもドア」や「タケコプター」といった道具を四次元ポケットから取り出す姿を見て、夢を膨らませた人もいるでしょう。
その独特な声で、中学生の時は友達に笑われたりしました。そのため、大山さんは声を発することをためらい、次第に消極的になっていきました。
そんな娘の様子を見て、大山さんの母親は「明日から声を出すクラブに入りなさい」と背中を押したのです。その後、放送研究部に入部し、連続放送劇を行なったことが評判となり、大山さんも自信を得ていきました。
どんな人でも、欠点や苦手としているものはあるはずです。それらが原因で本来の力が発揮できないとすれば、もったいないことです。
大山さんは、自分の声を「個性」として捉え、声優という職に就くことができました。欠点や苦手なものに背を向けずに、正面から立ち向かい、挑んでいくことも時には必要ではないでしょうか。
今日の心がけ◆苦手なものに向かっていきましょう
出典：職場の教養9月号
感想
大山のぶ代さんの人生を通じて描かれるこのエピソードには、他人と違うことがどれほど強みになり得るかという深い示唆が込められていて、とても胸を打たれました。
中学生の頃に「変わった声」で笑われ、傷つきながらも、その声を「個性」として肯定し、結果として日本中の子どもたちの記憶に残る「ドラえもん」を演じたという道筋は、簡単にはまねできないものの、誰しもが参考にできる生き方の一つです。
特に心に残ったのは、お母さんの「明日から声を出すクラブに入りなさい」という一言です。
優しさと厳しさが共存する愛情の形であり、親の導きが子どもの可能性を大きく花開かせることがあるのだと感じました。
「欠点」と見なされがちな部分も、視点を変えればその人にしかない「強み」に変わる。
この価値観の転換は、現代の「個性重視」が叫ばれる社会にも通じる普遍的なメッセージだと思います。
「今日の心がけ」にあるように、苦手なものに向き合う勇気が、未来の可能性を大きく変えていく。
そのことを、大山さんの軌跡は静かに、しかし力強く物語ってくれます。
否定的な感想
やや引っかかるのは、「苦手なものに向かっていきましょう」という今日の心がけの言葉に込められた、ある種の「努力信仰」です。
大山さんのように、自分の欠点とされたものを乗り越えて成功に結びつけられた例は稀有であり、誰もがそれをできるとは限らない現実も存在します。
苦手なことを克服するのではなく、回避しながら別の形で力を発揮するという道も、時には必要ではないでしょうか。
また、大山さんが「声を出すクラブ」に入るという選択をした背後には、母親の強い意志がありました。
もしその導きがなかったら、今のような結果にはつながっていなかったかもしれません。
その意味で、「本人の努力」だけを称賛してしまうと、運や環境、周囲の支えといった要素を見落としてしまいかねません。
個性を育むには、本人の努力だけでなく、それを支える周囲の理解や機会も同じくらい大切なのだと感じます。
苦手なことに立ち向かう勇気を美化しすぎず、そこにある葛藤や選択の重みも同時に受け止めることが、本当の意味での「個性を知る」姿勢なのかもしれません。
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