電車の中で
現在の職場に勤めて十年になるKさんは、技能を高め、人間としても成長しようと、さまざまな本を読み、多くの知識を得る努力を続けてきました。
ところが最近、ある出来事をきっかけに、大切なことに気づかされました。それは、会社帰りの電車の中でのことです。向かいの席には、二歳くらいの女の子を抱いた母親が座っていました。
見ると、女の子は母親の首に両手を回し、体をよじりながら、しっかりと母親に縋りついていました。その様子を見ながら、Kさんは次のように考えました。
女の子が母親に縋りつくのは、母親への絶対的な信頼があるからだろう。幼い子供は皆、親への信頼を糧として成長していく。信頼とは人を支える力であり、その力こそが、人を成長させる源になるのではないか。
Kさんの胸には、今の自分に足りないものは、信頼の力ではないかという思いが湧いてきました。そして、親の恩恵への思い、家族や会社の仲間への信頼の力を、これから高めていこうと心に決めたのです。
今日の心がけ◆信頼の力を高めていきましょう
出典:職場の教養12月号
感想
このエピソードには、人が本当に成長するための核心が静かに、しかし深く描かれているように感じました。
Kさんは十年間、知識を蓄え自分を高めようと努力してきたにもかかわらず、電車の片隅で見かけた親子の姿から、自分に欠けていたものに気づいた。
その「欠けていたもの」とは、知識ではなく“信頼”という、より根源的で人間的な力です。
親の腕の中に身をゆだねる子どもの姿は、理屈ではなく本能的な信頼の象徴であり、その力が子どもを育て、安心と勇気を与えている──その光景を前に、Kさんが胸を突かれた瞬間がありありと伝わってきました。
特に心に響いたのは、Kさんが親への恩、家族の支え、そして職場の仲間への信頼を改めて大切にしようと決意した点です。
知識や技能を積み重ねる努力はもちろん素晴らしいことですが、それだけでは人は本当の意味で強くなれない。
人は結局、人とのつながりの中で育ち、信頼によって前に進む力を得るのだという実感が、この小さな日常の一場面から立ち上がってくるようでした。
「今日の心がけ」にもあるように、信頼は努力して高めるべき“力”であり、意識して育てることが人間的な成長につながるというメッセージに深く共感しました。
否定的な感想
この話にはやや“きれいにまとまりすぎている”印象も受けました。
電車で見かけた親子の姿から人生の核心に気づくという展開は美しいのですが、その気づきがあまりにも理想的で、現実の複雑さを薄めてしまっているようにも思えます。
信頼は確かに重要な力ですが、それをただ「必要だ」と悟っただけで簡単に育てられるものではありません。
むしろ信頼は、日々の関わりの積み重ね、言葉と行動の一致、裏切りや葛藤を乗り越える経験など、多くの試練を通じてしか培えない重い価値のはずです。
さらに、Kさんが抱いた「自分に足りなかったのは信頼だ」という結論は一面的であり、彼が十年間努力してきた知識習得や技能向上の価値が軽く扱われているようにも感じました。
成長の源が信頼だけであるかのように語られると、他の要素──経験、判断力、技術、勤勉さなど──もまた必要不可欠であるという現実が見えにくくなってしまいます。
信頼の力を強調するあまり、過度に精神論に寄ってしまう危うさも感じました。
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