玄関のゴミ袋
Tさんは夫婦で家事を分担しており、「ゴミ出し」はTさんの役割でした。
回収日になると妻から「お願いね」と声がかかり、ゴミ出しから戻ると「ありがとう」と感謝される、そんな日々が続いていました。
ところが、ある時から様子が変わります。回収日には、無言で玄関にゴミ袋が置かれるだけになりました。労いの言葉もなく、ただそこにある袋を淡々と処理するだけになったのです。
〈私が捨てるのが当たり前みたいじゃないか〉とゴミ袋を出すたびに、〈一言くらいあってもいいのに〉という不満がTさんの心の奥で膨らんでいきます。
そんなある日、ふと自分の日常を振り返ったとき、妻がしてくれる洗濯や食事の準備を、どれほど「当たり前」と思っていたかということにTさんは気づきました。〈言わなくても分かるだろう〉と感謝を怠っていたのは自分だったのです。
その気づきが心のわだかまりをほぐし、Tさんは以後、妻に「今日もありがとう」などと感謝や労いの言葉をかけるようになったのです。
今日の心がけ◆自分の行動を振り返りましょう
出典:職場の教養1月号
感想
この話は、家庭という最も身近な場所で起こる「感謝の形骸化」に光を当てており、静かでありながらも強いメッセージを含んでいます。
特に、Tさんが「当たり前」と感じていた妻の行動に、改めて感謝の念を抱くようになる流れは、多くの人が共感できる気づきではないでしょうか。
人は慣れと日常の繰り返しの中で、他者の行為に対する感謝の言葉を忘れがちになります。
それは悪意によるものではなく、むしろ信頼や関係の深さゆえに「言わなくても分かる」という甘えが生じるからかもしれません。
しかし、この話が教えてくれるのは、そうした無言の甘えが、時に相手を孤独にさせ、役割が義務のように見えることで関係が冷えてしまうという事実です。
「ゴミ袋」という日常の些細な出来事が、感謝と無関心の境界線を描いている点に、大きな意味が込められています。
Tさんの気づきは、相手への視点を変えるきっかけとなり、結果として日々の関係性に温かさを取り戻すものとなりました。
「今日の心がけ◆自分の行動を振り返りましょう」という一文は、相手への不満を募らせる前に、自らの姿勢を省みることの大切さを端的に伝えており、自己反省と感謝の両方を促す効果的な言葉として印象に残ります。
否定的な感想
この話にはある種の「自己責任」に偏った視点が潜んでいるようにも感じられました。
Tさんが自分の不満を抑え、妻の立場に気づいたことは確かに美しい気づきではありますが、果たして妻の側には本当に何の変化や配慮不足がなかったのでしょうか。
かつてはあった「お願い」や「ありがとう」が急になくなる背景には、妻自身の疲労やストレス、あるいは無言の抗議のようなものがあった可能性もあります。
そうした「相手の変化」にも目を向けず、自分ばかりが気づいて反省する構図は、少し一方的でアンバランスな描写とも取れるのです。
また、家事分担という共同作業の中での「ありがとう」は、決して一方向だけのものではなく、互いに伝え合うべき感謝のキャッチボールであるべきです。
Tさんの気づきに感動しつつも、読者にとっては「なぜ妻の変化が語られないのか?」という違和感が残るのも事実です。
この物語がもっと深く、夫婦間の双方向の気持ちや行き違いにまで触れていたならば、よりバランスの取れた、リアルな人間関係の描写となっていたことでしょう。
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