過去の記憶
人は誰でも気づかないうちに、偏った見方で物事を判断することがあります。
ある日、Aさんは小学校の「学校だより」で絵の作品展があることを知りました。子供たちは、幼い頃から絵があまり得意ではなかったため、〈今も上手とはいえないのだろう〉と思いながらも、作品展を見に行くことにしました。
当日、長女の風景画を見てみると、色の使い方が工夫され、丁寧に描かれています。次女の方は人物画で、よく特徴を捉えて描かれていました。
その日の夜、子供たちに「良かったよ」と伝えると、二人は照れながら、「得意とはいえないけど、毎日少しずつ絵を描いているよ」と言うのです。
それを聞いてAさんはハッとしました。なぜなら、過去の記憶にとらわれて、子供たちは今でも絵を描くことが好きではないと思っていたからです。
Aさんは、「今の子供たちの姿を正しく見ていなかった」と反省したのでした。誰でも見た目や過去の印象だけで人を判断してしまうことがあります。だからこそ、思い込みや偏見で人を判断しないよう留意したいものです。
今日の心がけ◆ 思い込みをなくしましょう
出典:職場の教養5月号
感想
子供の成長というのは本当に早いもので、親が「この子はこうだ」と思っている以上に、日々の生活の中で少しずつ、でも確実に変化しているんですよね。
このお話を読んで、私自身も身の回りにある「決めつけ」や、過去の記憶だけで人を判断してしまっている瞬間にハッとさせられました。
Aさんは子供たちが昔、絵が苦手だったという記憶のまま時間が止まっていましたが、子供たちは親の知らないところで、毎日コツコツと努力を積み重ねていたわけです。
その「毎日少しずつ描いている」という言葉には、ただ技術が上がったということだけでなく、子供たちの健気な姿勢や、内に秘めた成長へのエネルギーが詰まっているように感じられて、胸が熱くなりました。
私たちはどうしても、過去のデータや一度植え付けられた印象で物事を見てしまいがちです。
特に家族のように距離が近い存在だと、甘えもあって「知ったつもり」になってしまうことが多いのかもしれません。
でも、この物語が教えてくれるのは、大切な人の「今この瞬間」の姿を、まっさらな目で見つめることの重要性です。
昨日までのその人と、今日のその人は違うかもしれない。そうやって常に新鮮な気持ちで相手に向き合うことが、本当の意味での信頼や深い理解につながるのではないか、そんな風に思いました。
否定的な感想
このお話を少し冷めた視点から捉えてみると、Aさんが抱いていた「うちの子は絵が下手だ」という思い込みが、これまで子供たちの可能性や自己肯定感を無意識のうちに摘んでしまっていなかったか、という点が少し気になりました。
親の言葉や空気感というのは、子供にとって想像以上に重いものです。
もしAさんが普段から「この子は絵が苦手だから」という態度を少しでも見せていたとしたら、子供たちは「どうせ自分は下手だから」と諦めてしまっていた可能性もあります。
今回は子供たちが自主的に毎日描き続けていたからよかったものの、一歩間違えれば、親の古い固定観念のせいで子供の隠れた才能や興味が完全に消えていたかもしれないと思うと、少しヒヤッとする部分があります。
また、「今の姿を正しく見ていなかった」と反省するAさんの姿は立派ですが、そもそも親が子供に対してそこまで強い先入観を持ってしまっていた背景には、日頃のコミュニケーションの薄さもあったのではないかと感じてしまいます。
毎日少しずつ絵を描いていることすら気づかないほど、子供の内面の変化に目を向けていなかったのだとしたら、それは単なる「思い込み」という言葉だけでは片付けられない、親子間の距離感の課題を示しているようにも思えます。
身近な存在だからこそ、もっと意識的に、今の言葉や行動に耳を傾ける努力が必要だったのではないでしょうか。
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