折り紙とメッセージ
転勤が決まり、家族で引っ越すことになったKさん。小学一年生の長女も転校することになりました。
最後の登校日の前日、長女が三十人のクラスメイトに折り紙のプレゼントを渡すと言い出しました。男の子には紙飛行機を、女の子にはハートの形を折り始め、さらに、その折り紙に一人ひとりへの感謝のメッセージを添えていきます。
しかし、徐々に長女の集中力がなくなり、Kさんが手伝うことになりました。折り紙を折りながら日頃の自分を振り返ると、身近な人に感謝の気持ちはあっても、その思いをうまく伝えられていないことに気がつきました。
そこでKさんは、家族に感謝のメッセージを書くことにしました。日頃の家族の姿を思い浮かべ文字にすることで、さらに感謝の思いが深まりました。家族と話す機会も増え、今まで以上にコミュニケーションがとれるようになったのです。
思いを手紙やメッセージとして文字に認(したた)めることで、身近な人への感謝の思いを深め、より良い人間関係を築きたいものです。
今日の心がけ◆感謝の思いを文字にしてみましょう
出典:職場の教養7月号
感想
この話は、日常の中にある小さな感謝のきっかけが、家族や人との関係を豊かにすることを丁寧に描いていて、非常に心に残りました。
特に、長女の「ありがとう」を折り紙とともに伝えようとする純粋な姿勢が、大人であるKさんの心を動かしたという流れには、人の思いが人の行動を変える力を持っていることを感じさせられました。
子どもが率先して人に感謝の気持ちを伝える姿は、大人が忘れがちな大切なことを思い出させてくれます。
Kさんが折り紙を通して、自分自身の日々の感謝の不足に気づき、そこから家族へのメッセージを書くに至る過程には、人間関係を見直すきっかけとしての「文字の力」が感じられました。
今日の心がけにある「感謝の思いを文字にしてみましょう」は、ただ気持ちを持つだけでなく、それを具体的に形にして伝えることの大切さを教えてくれます。
言葉にすることで、気持ちはより鮮やかに、より深く相手に届くのだと思います。
そして、それは書いた自分自身の心もまた整えていく。とても温かいエピソードでした。
否定的な感想
この話には少し「理想の家族像」や「感謝のかたち」が美しくまとまりすぎていて、現実的には少し距離を感じる部分もありました。
子どもの純粋な行動を起点にして感動的な気づきを得るという展開は、綺麗に収まりすぎていて、少し物語的すぎるようにも感じます。
また、感謝を「文字にする」ことが万能のように語られている点にも疑問があります。
感謝の気持ちを持ちながらも、言葉にすることが苦手だったり、それをあえてしない関係性の中にも、深い理解や愛情があると思います。
無理に言葉にしようとすると、かえって本心とずれてしまう人も少なくないのではないでしょうか。
この話に登場する家族が素直に気持ちを伝え合える関係性だったからこそ、文字による感謝が実を結んだのだと思いますが、そうでない家族にとっては、かえってその理想がプレッシャーになりかねません。
「感謝を文字にする」ことの意義を認めつつも、そのかたちは多様であっていいのではと感じました。