秋を楽しむ
「秋の空 廓寥として影もなし あまりにさびし烏など飛べ」
この短歌は、明治の歌人・石川啄木の作品です。 「秋の空は広々として影もな寂しすぎるからカラスくらいは飛んでほしい」との意味が込められています。
啄木が秋の空に寂しさを感じたのは、空が高く澄み渡り、動物が春や夏に比べて活動を潜めるため、静まりゆく季節の中に、命の躍動を求めたのでしょう。
秋が深まるにつれて日照時間は短くなり、夏に比べて身体的な刺激も減っていきます。 その刺激の減少が、心に寂しさとして表われているのかもしれません。
心の余白を埋めるために、秋の魅力に目を向けましょう。 秋には「芸術の秋」といった言葉に象徴されるように、心身を豊かにする要素があります。
例えば、夏のように気温の高い日は少なく、秋は過ごしやすい日が続きます。 日光浴や適度な運動は、心と体に心地よい刺激を与えてくれるでしょう。 普段、触れることのない芸術作品を鑑賞するのも、秋ならではの楽しみ方です。
心の静けさを味わいながら、秋の楽しさを見つけてみてはいかがでしょう。
今日の心がけ◆秋の楽しさを見つけましょう
出典：職場の教養10月号
感想
石川啄木の短歌に始まり、秋の寂しさと静けさを描きつつ、そこに潜む豊かさへと視点を転換していく構成がとても美しいと感じました。
啄木が詠んだ「秋の空 廓寥として影もなし」の一節には、風景描写を超えた心象風景がにじんでおり、それに「カラスでも飛んでほしい」と願う心情は、まさに人間の本質的な孤独と、それを埋める何かを求める心の動きが織り込まれています。
この話では、その「寂しさ」や「静けさ」を否定するのではなく、むしろそれを「楽しむ」ことへとつなげている点に、現代的なヒントが詰まっています。
秋はたしかに、外界の刺激が少なくなり、内側に意識が向かいやすい季節です。
そのタイミングで芸術や運動といった、内面的な充足をもたらす活動に目を向けるという提案は、心のバランスを保つうえでとても理にかなっています。
「今日の心がけ」にあるように、秋の楽しさを見つけるとは、外の世界の静けさに耳を澄まし、自分自身の内側に眠る感受性を呼び覚ます行為なのだと思いました。
秋の静けさにこそ、人間の感性がもっとも研ぎ澄まされる瞬間があるのかもしれません。
否定的な感想
「秋の楽しさを見つけましょう」という提案は、ある種の余裕や教養が前提となっているとも感じられました。
日々の生活に追われ、余暇もままならない人にとっては、芸術に触れることや日光浴・運動すら「楽しむ余地のある人のための話」に思えるかもしれません。
心の余白を楽しむという行為は、そもそも「余白」が存在していなければ成立しないのです。
また、秋の静けさを「寂しさ」として感じる感性も、すべての人に共通するものではありません。
人によっては、秋の訪れは物悲しさだけでなく、不安定な気候や暗くなる時間の早さによる心身の不調につながることもあります。
そうした側面にまったく触れていないのは、やや一面的な季節観だと感じました。
自然を愛でること、季節に寄り添うことの大切さには共感しつつも、それを万人の「心の処方箋」とするのではなく、あくまで一つの選択肢として提示する柔らかさがあると、より多くの人に届くメッセージになったのではないでしょうか。
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