ゴミ置き場
社宅に住んでいるMさんの地域では、月曜日はプラスチック、火曜日は燃えるゴミ、水曜日は燃えないゴミといったように、曜日ごとに回収されるゴミの種類が決まっていて、朝九時までにゴミを出すルールとなっています。
社宅に住んで以来、Mさんには腹立たしいことがありました。住人たちはゴミの分別を守り、決まった曜日に出しているのに、部外者が勝手にゴミを捨てていたのです。しかも、分別が守られていないゴミまでも散見されました。
ゴミ置き場に注意書きを掲示しましたが、まったく効果はありません。そこで住人同士で「どうすれば部外者のゴミをなくせるだろうか」と話し合いました。
様々な意見が出されましたが「ゴミ置き場が汚いとゴミが捨てられるのかもしれない」との考えに至り、全員で清掃を行なうことにしました。数時間の清掃で、塵一つない、清々しいゴミ置き場となりました。
その後、社宅内でのゴミ出しのルールを改めて確認し、美しいゴミ置き場の維持に努めると、不適切なゴミが捨てられることは、なくなったのです。
今日の心がけ◆改善のための知恵を出し合いましょう
出典：職場の教養12月号
感想
このエピソードには、日常の中にある小さな問題に対して、他責にせず、自分たちの行動から改善を目指す姿勢が描かれていて、深く心に響きました。
特に印象的だったのは、「注意書きで効果がないなら、見た目を整えることで行動を変えられるかもしれない」という発想の転換です。
ゴミ置き場という「汚れていて当然」と思われがちな場所を、あえて徹底的に美しく保つことで、外部からのマナー違反すらも自然に抑制されたという結果は、物理的な環境が人の意識や行動に及ぼす力の大きさを改めて教えてくれます。
また、ただクレームを言い合うのではなく、住人同士が知恵を出し合い、共同で清掃に取り組むという過程も素晴らしいと思います。
そこには「自分たちの暮らしを自分たちで守る」という、地域共同体としての成熟が感じられました。
美しく整った場所には、人の心も自然と引き締まり、マナーが連鎖する。その循環を意識的に作り出した点に、強い主体性と生活の知恵を感じます。
「改善のための知恵を出し合いましょう」という今日の心がけは、単なる問題解決の姿勢にとどまらず、関係性の質を高めるキーワードとしても機能していると感じました。
否定的な感想
この話の流れには少し出来すぎた印象も否めません。
注意書きが効かないほどマナーを守らない部外者が、美化されたゴミ置き場を見て突然行動を改める、という展開は理想的ではありますが、現実にはそこまで単純に効果が出ることばかりではありません。
人のモラルを変えるのは一朝一夕にはいかず、美しさだけでは限界があります。
たとえば、防犯カメラの設置や管理者による巡回など、もう少し具体的な実務的対策も併せて紹介されていれば、より現実味を持って受け止められたかもしれません。
また、「社宅住人全員で数時間かけて清掃」という部分にも若干の理想化が見られます。
実際には、清掃の呼びかけに応じない人や、そもそも関心を持たない住人もいるはずです。
全員が一致団結するという描写は美しい反面、現実のコミュニティの複雑さを見落としがちになります。
この文章がもっとリアリティをもって共感されるためには、反対意見や葛藤があった上で、それでも協力を引き出した工夫などが描かれていれば、より説得力を増したと思います。
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