自立を促す
青森県弘前市にある、弘前学院聖愛高等学校の硬式野球部は、元気な挨拶やユニークな準備体操などが、新聞やSNSで話題となっています。
同校野球部監督の原田一範氏は選手が自分で考える力を養うことを重視する「ノーサイン野球」という独自の指導方法を取り入れています。
監督の指示通りにプレーすることは大切であるものの、指示がなくても選手自ら考え状況を判断し、行動する習慣を身に付けることが重要だと氏は語ります。
こうしたアプローチは、野球だけに限らず、将来、生徒たちが学校を卒業した後、社会で活躍できる人材の育成を見越したものだといいます。
職場において、指示通りに仕事を遂行することは大切です。しかし、指示がなければ動けないのでは、社員個人や会社組織の成長は限られてしまいます。
社員一人ひとりが自ら考え、それぞれの役割を分担しながらリーダーシップを発揮することで、組織全体が一丸となって目標に向かうことができます。こうして、より強固な会社というチームが築かれていくのでしょう。
今日の心がけ◆自ら考えて行動しましょう
出典:職場の教養5月号
感想
弘前学院聖愛高等学校の「ノーサイン野球」という方針に、私は強い共感を覚えました。
指示待ちではなく、自ら状況を判断し、決断するというプロセスを高校生のうちから経験させることは、単なるスポーツ教育の枠を超えて、人格形成や社会性の育成に深く結びつくと思います。
現代は情報過多で、正解を外部に求めがちな時代です。
その中で「自分の頭で考える」という態度は、まさに今もっとも求められるスキルであり、こうした教育を受けた若者たちは、将来、柔軟で強い自立心をもった人材として、さまざまな場面で活躍するはずです。
また、ユニークな準備体操や元気な挨拶が話題となっているという点からも、チーム全体の雰囲気の良さや、主体性を大切にする文化が根づいていることがうかがえます。
「今日の心がけ」にある「自ら考えて行動しましょう」というメッセージも、まさにこの野球部の姿勢と重なります。
心から納得のいく行動は、外から与えられたものではなく、内面から湧き出る意志によって支えられているのだと改めて感じました。
否定的な感想
「ノーサイン野球」というスタイルには、一部でリスクも感じます。
高校生という発達途上の段階で、全てを自己判断に委ねるというのは、時に無用なプレッシャーや混乱を招く可能性もあるでしょう。
考える力を育てることは大切ですが、それにはある程度の土台が必要であり、それを整えるのが指導者の役割でもあります。
原田監督がどこまでそのバランスを取っているかは分かりませんが、「自ら考える」ことが先行しすぎて、肝心の技術や戦術の理解が疎かになってしまっては本末転倒です。
また、社会に出れば、必ずしも「自律」が歓迎されるとは限らず、組織文化によっては上司の指示に従うことが最優先される場面もあります。
その現実とのギャップに、生徒たちが後に戸惑うこともあるかもしれません。
理想的な教育方針が、現実との調和を失ってしまうと、生徒自身が苦しむことになるという危うさもはらんでいると感じました。
自立を促す一方で、適切な導きと支援が併存していなければ、その教育効果は十分に発揮されないのではないでしょうか。