2026年6月23日(火)  父の日の一杯

父の日の一杯

六月二十一日は父の日でしたが、皆さんはどのように過ごされたでしょうか。この日を「父の日は、お父さんと飲む日」と提唱しているのが、鹿児島県鹿屋市に本社を構える大海酒販株式会社の社長、山下正博氏です。

きっかけは約二十年前、大学生だった長男が勉学に集中していないことを、妻から聞かされたことでした。そこで山下氏は、居酒屋に長男を呼び出し、説教を始めたのです。

焼酎をひと口飲んでは、懇々と諭すように叱りつけました。息子のためを思うあまり、口調は激しくなっていきましたが、不意に息子と一緒に酒を飲んでいるこの状況を、嬉しいと感じている自分に気づいたといいます。

実はその三ヵ月前、山下氏は実の父を亡くしました。厳しい父が苦手で、距離を置いていたため、ほとんど一緒に酒を飲む機会はありませんでした。それでも、まれに一緒に飲んだことがあり、その時の父の満面の笑顔がよみがえったのです。

親子で飲める喜びを父も感じていたと思うと、心が温まる思いがしたという山下氏。これからも息子と酒を酌み交わす機会を大切にしようと誓ったのでした。

今日の心がけ◆ 親子で向き合う時を持ちましょう

出典:職場の教養6月号

感想

お酒を酌み交わすという具体的な行動を通じて、親から子へ、そしてまたその子へと、言葉にならない情愛が受け継がれていく様子がとてもドラマチックに描かれており、胸が熱くなりました。

山下氏が息子さんを叱りつけている最中、ふと「一緒に飲めている嬉しさ」に気づく場面は、人間の感情の複雑さと温かさを生々しく伝えています。

頭では理詰めで怒っていても、心の本音の部分では、成長した我が子と同じ目線でグラスを傾けている事実に深い喜びを感じている。

この矛盾するような父親の心理は、実際にその立場になってみないと分からない、とてもリアルな実感にあふれていると感じます。

さらに素晴らしいのは、その瞬間に、かつて距離を置いていたご自身の父親の「満面の笑顔」を思い出し、当時の父親の気持ちを時を超えて理解する点です。

自分が親になって初めて、かつて煙たかった親の愛情の深さに気づくというのは、人生における最も美しい和解の形ではないでしょうか。

「お父さんと飲む日」という提唱には、単に楽しくお酒を飲もうというだけでなく、照れくさくて普段は向き合えない親子が、本音でぶつかり合い、愛されていることを実感し合うための、深い願いが込められているのだと感じました。

否定的な感想

お酒という手段を親子のコミュニケーションの絶対的な中心に据えてしまう点については、少し時代とのギャップや視野の狭さを感じてしまう部分もありました。

お酒の力を借りて本音を語り合うというスタイルは、昭和や平成初期のビジネスや家族のあり方としては定番でしたが、現代においては少しアルコールへの依存度が高すぎるアプローチのようにも思えます。

そもそもお酒が体質的に飲めない人や、アルコールが入ることでかえって感情が暴走し、説教がただの威圧や傷つけ合いになってしまうリスクもあるため、万人が共感できる美談とは言い切れない面があるのではないでしょうか。

また、大学生の息子さんに対して「懇々と諭すように叱りつける」という構図も、父親側の主観としては「愛情ゆえの熱さ」であっても、受け手である子ども側からすれば、居酒屋という逃げ場のない空間でのプレッシャーになりかねません。

山下氏が感じた「一緒に飲める喜び」が、息子さん側にも同じように共有されていたのかが少し見えにくく、どこか父親側の自己満足やセンチメンタリズムに偏ってしまっている印象も受けます。

親子の絆を確かめ合う方法は、お酒を飲むことだけではなく、共通の趣味や静かな対話など、お互いの価値観を対等に尊重し合える多様な形が模索されてもいいのではないかと感じました。

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