搭乗券
日々の生活の中では、予期せぬハプニングに見舞われたり、計画通りに進まないことがあります。むしろ予定通りにならないことの方が多いのかもしれません。
Tさんが出張で飛行機に搭乗した時のことです。いつものようにスマートフォンで電子搭乗券の画面を出そうとすると、途中で画面が固まってしまいました。
何をしても画面が動かないため、仕方なく航空会社のスタッフに事情を話すと、会員番号を確認して、すぐに紙の搭乗券を発行してくれたのです。
搭乗券を握りしめて機内へと向かいながら、通話やメールだけでなく、ショッピング、情報検索など、スマホに依存し過ぎていたことを反省したといいます。
Tさんは座席に座りながら、入社当時から先輩に諭されていた、「何事も二段構えで準備せよ」という言葉を懐かしく思い出していました。
航空会社がデジタルとアナログの両構えで対応してくれたように、自身の仕事でも二通りの方法や手段を用意することの重要性を痛感したといいます。Tさんは今でも、その時の紙の搭乗券を大切に保管しているということです。
今日の心がけ◆ 備えを万全にしましょう
出典:職場の教養6月号
感想
スマートフォンが生活のインフラとなっている現代において、デジタルの便利さと同時に潜む脆さを、実感を伴って見つめ直させてくれる素晴らしいお話だと感じました。
飛行機の搭乗直前という、誰もが焦るシチュエーションで画面が固まってしまうハプニングは、想像するだけでも冷や汗が出ます。
そんな時に航空会社が紙の搭乗券というアナログな手段ですぐに救ってくれた経験から、Tさんが「スマホへの依存」を猛省し、入社当時の先輩の教えに立ち返るプロセスには非常に深い説得力があります。
「二段構えで準備する」という言葉は、言葉で言うのは簡単ですが、すべてがスムーズに動いている時にはどうしても忘れがちになってしまうものです。
デジタル化が進み、効率性が最優先される時代だからこそ、あえて紙の控えを持っておく、別のルートを考えておくといった「アナログなバックアップ」の価値が際立ちます。
予期せぬトラブルが起きた時、ただ慌てるのではなく、それを自分の仕事や準備のあり方をアップデートする契機として捉え、当時の紙の搭乗券をお守りのように大切に保管しているTさんの実直な姿勢に、プロフェッショナルとしての仕事の流儀を学ばせてもらった気がします。
否定的な感想
このエピソードから導き出されている「何事も二段構えで準備せよ」という教訓に対して、現代のビジネスやテクノロジーの進化という観点から見ると、少し過剰な防衛策や精神論のようにも感じられました。
Tさんのスマホが固まってしまったのは確かにハプニングですが、最終的には航空会社側が会員番号から瞬時に紙の搭乗券を発行して、システムとしてバックアップの役割を果たしています。
つまり、個人がわざわざ事前に紙の搭乗券を印刷して「二段構え」をしていなくても、社会や企業のインフラ側が二段構えで待受けてくれているのが現代の優れた仕組みだとも言えます。
それにもかかわらず、個人がすべてをアナログで二重に準備しようとすると、かえって手間が増え、デジタル化による効率化の恩恵を打ち消してしまいかねません。
また、その時の紙の搭乗券を「今でも大切に保管している」という結びについても、少し感傷的すぎるのではないかという違和感を覚えました。
失敗や教訓を心に刻むことは大切ですが、物理的なモノ(ゴミになりかねない古い半券)をいつまでも手元に残しておくことは、皮肉にもTさんが反省した「不要なモノへの依存」や「整理整頓の妨げ」にもつながりかねません。
デジタルツールをただ遠ざけるのではなく、スマホが固まった時のためにタブレットにも同期させておく、あるいはスマートウォッチに連携させておくといった、「現代的なデジタルでの二段構え」という視点があってもよかったのではないかと個人的には思いました。
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