明察力と勇気の大切さ
昨年の春、Kさんが入社した機械部品製造会社の入社式において、社長は新入社員を前に挨拶に立ち、「日々の業務に真摯に取り組むことに加え、特に二つの点を意識してほしい」と述べました。
一つ目は「明察力」です。社長は、目の前の事態や背景にある事情を的確に把握し、物事の本質を見極めて将来を見通す力を養うことの重要性を説明しました。
二つ目は「勇気」です。道理に基づき正しい行ないを選択し、正義感や使命感といった高い価値観を持って、行動を律し続ける姿勢が求められると語りました。
社長は挨拶の締めくくりとして、「明察力と勇気、この二つが今後の人生や仕事が意義あるものとなるかを左右する」と述べ、新入社員への期待を示しました。
それから一年が経過した現在、Kさんは、自身が携わる企業の事業内容や将来の展望、置かれている経営環境について理解を深める努力を続けています。
また、業務においては、判断や行動の根拠を意識しながら、責任ある対応を心がけて日々の仕事に取り組んでいます。
今日の心がけ◆自己研鑽に取り組みましょう
出典:職場の教養6月号
感想
社長が新入社員に向けて贈った「明察力」と「勇気」という二つの言葉は、激変するこれからの時代を生き抜くために、まさに本質を突いた普遍的なメッセージだと深く共感しました。
入社したばかりの頃は、どうしても目の前の作業を覚えることや、言われた通りにこなすことだけで精一杯になりがちですよね。
しかし、そこで思考を止めず、「なぜこの仕事が必要なのか」「この事態の背景には何があるのか」と一歩踏み込んで物事の本質を見ようとする「明察力」を意識することは、単なる作業員ではなく自立したビジネスパーソンになるための土台だと感じます。
さらに、そこに「勇気」を並べて提示している点が素晴らしいと思いました。
どれだけ正しい現状分析や未来への見通しができたとしても、それを実際の行動に移したり、おかしいと思ったことに声を上げたりする勇気がなければ、何も変えることはできないからです。
入社から一年が経ったKさんが、会社の事業内容や経営環境にまで視野を広げ、自分の判断に責任を持とうと努めている姿からは、社長の言葉を単なるスローガンで終わらせず、自分の軸としてしっかり消化している様子が伝わってきて、とても頼もしく、応援したい気持ちになりました。
否定的な感想
この社長の言葉やKさんの受け止め方に対して、新入社員に求めるハードルとしては少し抽象的で高すぎるのではないか、という戸惑いも覚えました。
「明察力」や「勇気」という言葉は非常に響きが良く、理想論としては完璧ですが、まだ現場の経験が浅い新入社員にとっては、具体的に日々の業務のなかでどう体現すればいいのかが掴みにくい概念のようにも思えます。
物事の本質を見極めたり、高い価値観に基づいて行動を律したりすることを強調するあまり、現場の泥臭い基本作業や、組織のルールに従うといった地道なプロセスの重要性が、どこか軽視されてしまう危険性はないでしょうか。
また、一年が経ったKさんが経営環境の理解に努めていることは素晴らしい努力ですが、若手が「道理に基づく正しい選択」をしようとした際、もしそれが会社の古い慣習や上司の指示とぶつかってしまった場合、組織側がそれを本気で受け止める度量があるのかも気になります。
下手をすると、新人に高い理想を押し付けるだけで、実際の現場では「指示通りに動くこと」だけを求めるといったギャップを生み、Kさんのような真面目な社員ほど、理想と現実の狭間で思い悩んでしまう原因になりかねないのではないか、という危惧も少し残りました。
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