いつも通りとは限らない
普段の生活の中で「いつもこうだから」と深く考えずに行動することがあります。また、人に対しても「この人はこういう人である」と決めつけ、相手と接することもあるのではないでしょうか。
ある日、Sさんが幼稚園に長男を迎えに行くと、先生から「申し訳ありません。今日、園児同士の喧嘩がありまして」と報告を受けました。
その話を聞き、Sさんは「うちの息子が、相手が嫌がることをしたからですよね」と息子の話も聞かずに答えました。
帰宅後、息子から「何でお父さんはボクを悪く言うの」と言われ、自分の浅はかな言動が息子を傷つけたと反省したSさん。「決めつけてごめんね」と謝り、日頃の自分の姿を顧みました。
仕事でも「いつも通りで大丈夫」「あの人は何を言っても仕方がない」などと最初から決めつけ、改善を試みてこなかったことに気づいたSさんは、心新たに業務と向き合うことを決めたのでした。
今日の心がけ◆新たな気持ちで物事と向き合いましょう
出典:職場の教養6月号
感想
この話には、日常のなかで無意識に行ってしまう「決めつけ」に対する深い反省と、それに気づいた後の変化が描かれていて、とても誠実で胸を打たれました。
Sさんのように、私たちは多忙な毎日のなかで「いつも通り」に安心し、それに甘えて他者や出来事を簡単に枠にはめてしまいがちです。
それが家族であっても、仕事仲間であっても、一度ついた印象に基づいて接してしまうことは少なくありません。
特に、子どもの声を聞かずに自分の中で結論を出してしまった場面では、親としての無意識の権力行使が浮き彫りになります。
けれど、息子の率直な一言がSさんの心にしっかり届いたこと、そして素直に謝ったことは、深い愛情と信頼の証だと感じました。
それが、Sさんの仕事にまで波及して「新たな気持ちで向き合う」という行動変容に繋がったところに、この話の美しさがあります。
今日の心がけである「新たな気持ちで物事と向き合いましょう」が、まさにSさんの体験から自然に導かれるものであり、読んだあと心にすっと入ってきました。
否定的な感想
この話に少し違和感を覚えたのは、Sさんの気づきがあまりにも「きれいに」描かれている点です。
人はそう簡単に、自分の無意識の偏見や決めつけを省みて、すぐに謝罪し、行動まで改められるものなのでしょうか。
実際には、子どもに対して誤解していたとしても、なかなか素直に謝ることができなかったり、「でもやっぱり悪かったんじゃないか」と自己正当化してしまったりするのが人間の複雑さではないかと思います。
また、仕事においても「いつも通り」が悪であるかのような描写には、少し乱暴さを感じました。
業務の効率や安定性のなかには、ルーティンの大切さも含まれているはずです。すべてを疑ってかかるような姿勢は、逆にチームやプロジェクトの軸をぶらせる危険もあります。
もっと葛藤や揺らぎがあってもよかったように思います。