益者三友
益者三友とは、『論語』季氏篇にある言葉です。友人の中でも、交際するに値する人の特徴を三つに絞って説明しています。
一つ目は、正しいと思うことを直言する正直な人です。人は、相手から嫌われたくないという感情が邪魔をしてつい直言を避けがちです。しかし、自分が間違っているときに正直に教えてくれる人は、友人として貴重な存在です。
二つ目は、思いやりがあって誠実な人です。私利私欲を交えず、真心をもって人や物事に接する人のことでしょう。同じような意味をもつ言葉には、篤実、真摯、忠実、至誠などがあります。
最後の三つ目は、博識な人です。知識が幅広い分野に及んでいる人や、広く物事を知っている人を指します。
幼い頃からの友人、学友、職場での親しい人など、多彩な人々に囲まれて生きているのが私たちですが、その中に益者三友に該当する人がいれば幸いです。
私たち自身も相手にとって有益な存在になりたいものです。
今日の心がけ◆有益な友と充実した日々を送りましょう
出典:職場の教養6月号
感想
「益者三友」という概念は、現代の人間関係においてもとても考えさせられます。
特に、直言してくれる正直な人の存在は、自己成長に不可欠です。
耳の痛いことを言ってくれる人こそ、信頼できる本物の友人であり、その言葉を真正面から受け止める覚悟が、自分自身の成熟を促してくれます。
現代は「忖度」や「空気を読む」文化が強く、率直な言葉が敬遠されがちですが、だからこそそうした友の価値はより際立ちます。
また、思いやりと誠実さを兼ね備えた人がもたらす安心感は格別です。
利害関係にとらわれずに接してくれる人との関係は、疲れた心を癒し、無理のない自分を保たせてくれます。
そして、博識な人との対話は、自分の世界を広げてくれる貴重な機会です。
そんな友に恵まれれば、日々は確実に豊かになります。
今日の心がけ「有益な友と充実した日々を送りましょう」は、まさに人生を実りあるものにするための指針と言えるでしょう。
否定的な感想
「益者三友」という考え方には、やや理想化された人間像を求めすぎている側面も感じます。
現実の人間関係はもっと曖昧で、不完全な要素に満ちています。
誰もが常に正直に直言できるわけではなく、また常に誠実で博識でいられるわけでもありません。
そのような「理想の友」ばかりを追い求めることで、逆に他者への期待が過度になり、関係を築くハードルを上げてしまう可能性もあります。
また、「有益な友であるかどうか」という視点は、人間関係に打算的なフィルターをかけてしまう危険性もあります。
本来、友情は損得ではなく、共に過ごす時間の中で育まれていくものであり、時には未熟な面や迷いをもつ相手と向き合うことで得られるものもあります。
「有益でなければ交わる意味がない」といった風に受け取ってしまうと、人付き合いが表面的になってしまう懸念も否めません。
これらを踏まえると、「益者三友」は理想として心に留めつつも、実際の関係性には柔軟さと寛容さをもって接することが重要だと感じます。