支えの結晶
金銭は生活を支える大切なものですが、決して自分一人の力では得られません。
入社一年目のBさんは、わずかですが賞与を受け取りました。金銭という形の喜びを感じる一方で、金額の向こう側にある重みについても考えていました。
現代の賞与の制度は大正期以降に企業給与制度の中で整備されたものですが、その背景には、明治期の商家における奉公人への報奨金など、労をねぎらう慣行があったと指摘されています。
こうした背景を踏まえると、現代の賞与も、単なる臨時収入ではありません。会社の業績はもちろん、上司や同僚の支え、取引先との関係、家族の理解と協力など、様々な力が積み重なった結果として支給されるものといえるでしょう。
Bさんは、購入を考えていた商品を思い浮かべながらも、「このお金は自分一人の力で得たものではない」と立ち止まりました。
そして、初めて受け取った賞与の一部を、両親への感謝の気持ちに充てることにしたのです。金銭の背景に思いを巡らせ、感謝と節度をもって活かしていきたいものです。
今日の心がけ◆ 感謝をもって金銭と向き合いましょう
出典:職場の教養6月号
感想
入社一年目という、まだ自分の仕事に必死な時期に、受け取った賞与の背景にある「他者の存在」にまで目を向けられるBさんの姿勢に、とても深い感銘を受けました。
初めて手にするまとまったお金を前にしたら、普通なら「何を買おうか」「頑張った自分へのご褒美は何にしようか」と、自分の欲求だけで頭がいっぱいになってしまうのが自然なことだと思います。
そこを一度立ち止まり、このお金が支給されるまでにどれほど多くの人が関わってきたのか、その見えない繋がりに思いを馳せる想像力の豊かさは、本当に見事だと感じました。
歴史を紐解けば、賞与には長年の労をねぎらうという温かい文化が根底にあるとのことですが、現代のビジネス社会でもその本質は変わっていないのかもしれません。
自分が上げた成果の裏には、ミスをフォローしてくれた先輩や、環境を整えてくれた会社、そして何よりこれまで育ててくれた家族の存在があります。
Bさんがその一部を両親への感謝の形として使うことに決めたのは、単にお金を消費する以上の、とても血の通った素晴らしいお金の使い方だなと感じます。
こうした感謝の気持ちを若いうちから実感できる人は、これから先、どんなに大きな仕事を成し遂げたとしても、決して傲慢にならずに周囲を大切にしていけるのではないでしょうか。
お金の価値を金額の大きさではなく、そこに込められた「支えの重み」で図るという大切な視点を、このお話から改めて教えてもらったような気がします。
否定的な感想
このお話を少し現実的な視点から眺めてみると、Bさんの健気な行動にどこか過剰な美談化というか、新入社員に対して少し同調圧力をかけるような危うさも感じてしまいました。
入社一年目の賞与といえば、決して高額ではないケースがほとんどですし、それこそ日々の生活をやりくりしたり、社会人としての最低限の準備を整えたりするために、自分のために全額使ったとしても誰も責められる筋合いのものではないと思うのです。
「自分一人の力で得たものではない」という謙虚さは確かに美しい美徳ですが、見方を変えれば、まだ大した成果を出していない新人が、自分の労働の対価を素直に受け取ることに引け目を感じてしまっているようにも映ります。
会社から支給される給与や賞与は、労働契約に基づいた正当な権利でもあります。
周囲への感謝を意識するあまり、自分の努力や労働そのものの価値を過小評価してしまうような空気感には、少し息苦しさを覚えてしまいます。
また、初任給や最初の賞与で親孝行をするというエピソードは定番ではありますが、それを「あるべき正しい姿」として提示されると、家庭環境が複雑な人や、まずは自分の生活防衛で精一杯な人にとっては、少し重荷に感じられるのではないかとも思いました。
感謝の表し方は人それぞれであり、必ずしも金銭を誰かのために使うことだけが正解ではないという、もう少し多様で柔軟な視点があってもいいのではないかと感じます。
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